私たちはオルタナティブを推進します

 

オルタナティブとは直訳すると「もう1つの」「代替の」という意味になりますが、私たちのオルタナティブとはメンタルヘルス(精神保健)における既存のシステム、概念にとらわれない別の選択肢になります。

 

既存のメンタルヘルスは、心の問題を医療が解決できると言わんばかりに過度の医療化が進んでいます。しかしながら行われることは、患者にレッテルを貼り(診断名を付け)、薬物を処方するのがせいぜいです。患者がなぜ苦しいのか、辛いのかを聞くこともほとんど無く、辛いのに良いのはこの薬、苦しいのにはあの薬と症状に合わせて薬物を処方します。そうした背景には、患者が訴えている症状は「脳の異常」から来ており、脳内の化学的バランスを整えるために薬を処方するという信念があります。しかしながらその信念に科学的な根拠はありません。もし科学的な根拠があるのであれば、脳内の化学的バランスがどのように崩れているのかを精細に調べた上で処方する必要があります。にも関わらず、医師は患者の訴えに応じて薬を処方しているのが現状です。

精神科医が処方する薬の多くは向精神薬と呼ばれる中枢神経に働きかけ精神状態を変化させる薬になります。上記のように脳内の化学的バランスを変化させる作用があり、心身ともに大きな変化が起きることも少なくありません。大きな変化には不快な症状を伴う、つまり副作用も多く、場合によっては重篤な状態になることもあります。そのような薬を根拠もなく、沢山、そして延々と処方し続けているのが既存のメンタルヘルスにおける医療の実態です。

 

我々はこのような既存のメンタルヘルスではなく、そもそも現れている症状が病気なのか?という視点から捉えます。「病気」でないのであれば何なのかと問われれば「人生の危機」と答えます。誰しもが時として辛く、苦しい場面に立つことがありますが、多くは上手く対応して乗り越えていきます。しかしながら、大きなストレスが立て続けに来るなどして対応できない位になる場合もあります。そこで人は危機に直面することになるのです。ストレスを外に仕向ければ発狂するかもしれないし、ギャンブルやアルコールにはしるかもしれない。内に向ければ眠れずに幻覚を見たり幻聴を聴いたりするかもしれないし、気分が果てしなく落ち、何をする気にもならなくなるかもしれません。ではこれは「病気」でしょうか。そうではないというのが我々の立場です。本人に人生の危機が起きている。だからこそその危機をどうして脱すれば良いのかを一緒に考えていきます。安易に診断名を付け、薬を飲ませて本人の責任にさせるようなことには反対の立場です。

 

日本ではこのオルタナティブの考え方が全くといっていいほど浸透しておりませんが、海外では場所によっては既存のメンタルヘルスとオルタナティブが半々の所もあります。世界保健機関(WHO)ではオルタナティブ(リカバリー)モデルが地域メンタルヘルスの目指すべき形であるとはっきり述べています(参考:メンタルヘルスアクションプラン2013-2020)。今後日本でもオルタナティブの考え方が普及していくことは間違えないでしょう。